2015 冬の日本海合宿。


真っ直ぐに立って居られない程の強風。荒波が岸壁に打ち付けられるドドーンという凄まじい轟音。海面はめまぐるしく波立ち、波頭が強烈な北風にその形を維持できず、霧となって水面を走り、耳元では暴風がゴウゴウと唸っている。

2015年1月17~18日、僕がお世話になっているフェザークラフトカヤックプロショップのグランストリームの主催で毎年この時期に開かれる、真冬の日本海合宿に参加すべく、早朝から車を走らせ、若狭湾に向かう。 高速道路から時折見える若狭湾のとんでもない荒れ具合に、このままUターンして帰ろうか・・・と、すでに弱腰になっている僕。そして、いよいよ会場に到着し、冒頭の荒波を目前にして思った。


『 無い無い・・・この海はアカンやつやん・・・。 』


僕はこの時、すでにこの海に呑まれ、負けていた。


午前中はカヤックを組み立て、各自道具の準備。 時折視線を海に向けると、風は強風から暴風へ、雨にはみぞれが混じり、横殴りの雪へと刻々と悪い方へと変貌してゆく。 

昼食をはさみ、いよいよトレーニング開始のために、カヤックを浜に並べる。


目前に迫る荒れた冬の日本海の怒濤の迫力に、僕を含め、参加者は呆然と立ち尽くすしかない。

簡単なブリーフィングを終えると、まるで平野を往くが如く、大瀬さんは荒波へと漕ぎだした。

もうこうなったら行くしか無い。沖では大瀬さんが、浜では元オリンピックの強化選手であり今回の合宿の講師である近藤ティーチャーがサポートしてくれるので心強い。

意を決してカヤックにまたがり、勢いにまかせて出艇~~!!! しかし、波打ち際に立ち上がる最初の波にもみくちゃにされて浜に打ち上げられる・・・_| ̄|○

参加者全員が数度のチャレンジにもかかわらず、漕ぎだす事も出来ない状態が続く。


時間とともに海況は悪くなる一方だ。

海には乳白色のガスが立ち込め、時折、秒速20m程のブローが海面を毛羽立たせてぶっ飛んでいく。 しかし、誰もギブアップすること無く、果敢に荒波にチャレンジを続ける。



リトライを繰り返すうちに、まるで雛が巣立ちの日を迎える様に、一人、またひとりと、最初のブレークした波を乗り越えて沖へと漕ぎだす。

そして・・・沈 (;´∀`)



僕も恐怖に慄きながら、なんとか漕ぎ出すことが出来た。

しかし、浜から見ていた荒れる海は、いざ漕ぎだしてみると、荒れてるなんてもんじゃ無い。 

波は前後左右から、なんの規則性もなく押し寄せてくるわ、波しぶきだか雨だかわからない水滴(というか、水の塊)が顔面を容赦なく叩きつけるわ、猛烈な暴風に煽られて、漕ぐどころじゃなくデッキに伏せとかないと簡単にひっくり返されそうになるわ・・・でも漕がないと結局沈しか待っていない状況。

もう・・・モミクチャって言葉が一番しっくり来る。

恐怖に萎縮する身体をなんとか鼓舞しようと、「おりゃぁ~~~!!!」っと叫びながら、100m進んで、一瞬風が弱まったスキをついて、命がけのUターンを決め、「おりゃぁ~~~!!!」っと叫びながら浜に向かって一直線。

最後は、結局波にのまれて沈したまま海岸に打ち上げられた・・・。

しょっぱい若狭の水を吐き捨てながら思う。


『これ・・・やっぱりアカンやつやん・・・。』


しかし、こんな極悪な海況の中、笑いながら荒くれた海を縦横無尽に漕ぎまわる2人のクレイジーな男たち。



大瀬さん&近藤ティーチャーと、ヒヨッコパドラーの僕の間には、決して超えられない壁があると、つくづく痛感した。この2人はホント、半端無い!


この日僕が漕いだ時間は10分くらい。 でも、疲労度は30km漕いだのと同等だった。冬の日本海は・・・やっぱり恐ろしい所だった。




打って変わって翌日は朝から青空が見え、風も波も前日とはもはや違う海の如く。

それでも沖に出れば大きな見上げるように迫り来るウネリがあるのだが、強烈な前日を経験している僕達にとっては天国のようなパドリング日和。






厳冬期の日本海の大きなうねりの中、沈脱再乗艇訓練、追い波や横波での漕ぎ方等、普段では絶対に出来ない練習は、トレーニングというよりも、自然を使った遊園地のアトラクションみたいなもの。


しかし、すっかり楽しんだ僕を待っていたのは・・・強烈な船酔いだった。


何度も喉元までせり上がるゲ○を飲み込みながら、必死で浜を目指す僕は、土偶みたいな顔だったらしい。




この冬の日本海合宿の参加はこれで2回目となる。 前回の2年前は、ちょっとしたウネリでも恐怖に怯え、萎縮してまるで漕げなかった。 しかし、強烈な1日目を経験した後ということもあっただろうけど、2日目のウネリでは怖いどころか、楽しくてしょうがなかった。

セルフレスキュー(再乗艇)もすんなり出来たし、グングンと持ち上げられる普段の旅では経験できないサイズでの追い波も、恐怖はなかった。


ただただ、好きで楽しいから海を漕ぐ。仲間と笑い、自然を感じ、素敵な時間を共有したいから旅をする。そんな日々が、気付かないうちに僕を成長させてくれていると思う。


まだまだ漕力や旅力で足りないものは数え切れないけど、もっともっと、いろんな海と出会い、いろんな人と出会い、人生を、より豊かにできればいいな・・・と思う。


今年はもう一回り成長して、またここに戻ってこよう。



ご一緒だった皆さん、お疲れ様でした。


またどこかの海で♪




僕の旅は、まだまだ続く・・・。



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